ミクロソーシャルワーク
ケースワーク/グループワーク
現在の社会福祉援助技術体系の考え方では、ミクロレベルでのソーシャルワークのことをケースワーク(casework)とグループワーク(groupwork)に区別しています。ケースワークは、解決困難な課題、問題をもった対象者(クライエンもしくは利用者ト)が主体的に生活できるようにく個人や家族といった個別への支援や援助を行うための社会福祉援助技術を指しています。また日本では個別援助技術と翻訳されているようですが、専門家の間では「ケースワーク」の呼称の方が普及しています。グループワークとは、集団援助技術と訳され、具体的には、生活上何らかの問題あるいはニーズを抱えている個人に対して、その問題の解消・軽減や、ニーズの充足を図る上 で、同じような問題を抱えた仲間による小集団などのグループにおける相互作用の力を活用する社会福祉援助技術です。
ケースワークの起源は、19世紀後半のイギリスの慈善組織協会が貧困層に対して友愛訪問員という現在での社会福祉専門家を送り出し、慈善事業を展開する中で、必要に応じて友愛訪問員に対する訓練を通じて専門的な援助技術として確立されていったのが始まりです。さらに1920年代以降、アメリカでのスラム街での支援活動などが活発になる中でその援助技術が発達し、後にケースワークの母と呼ばれるようになる著名なメアリー・リッチモンド(1861〜1928年)の「ケースワークとは何か」、「社会診断」によってケースワークの理論化、体系化がなされていったのです。
ケースワークは、クライエントの生活における諸問題(生活困難、問題解決、社会生活に関するニーズの充足)について、様々なアプローチをもって改善を行う。
ケースワークは社会生活上の諸問題に直面して困難な状況におちいっている個人または家族(クライエント)に対して、その困難な状況から自立できるようソーシャルワーカーが個別的に援助していく過程であり、ソーシャルワーカーとクライエントとの専門的対人関係を軸にケースワークは展開されていきます。
代表的なケースワークの定義
リッチモンド(1922年)「ケースワークとは、人間とその社会環境との間を、個々に応じて意識的に調整することによって、パーソナリティの発展を図ろうとするさまざまな過程からなるものである」
パワーズの定義(1949年)「ケースワークはクライエントとその環境の全体または一部分との間に、より良い適応をもたらすのに役立つような、個人の内的な力、及び社会の資源を動員するために、人間関係についての科学的知識及び対人関係における技能を活用する「art」である」
パールマンの定義(1957年)「ケースワークは個人が社会的に機能する際に出会う問題を、より効果的に処理できるよう援助するために、ある人間福祉機関によって用いられる一つの過程である」
バイステックの7原則
ケースワーカーの基本的な姿勢として最も有名な原則として「バイステックの7原則」が挙げられます。これはアメリカのフェリックス・バイステックが「The Casework Relationship」にて著した概念で、現在においては最も基本的なケースワークの作法として認識されています。具体的には、7つの項目から成り立っています。
個別化
クライエントの抱える困難や問題は、その人の問題であり、「同じ問題(ケース)は存在しない」とする考え方であり、個人を尊重することが重要です。
受容
クライエントの考えや思いを否定してはならないという考え方。ソーシャルワーカーによるクライエントへの直接的命令や行動感情の否定があってはなりません。
意図的な感情表出
クライエントの抑圧されやすい否定的な感情や独善的な感情などを表出させることを保障する考え方。
統制された情緒的関与
クライエント自身の感情に左右されずに、ソーシャルワーカー自身がクライエントの心を理解し、自らの感情を統制して接していく事が重要。
非審判的態度
クライエントの行動や思考に対して、批判したり、判断したりしないこと。
利用者の自己決定
自らの行動を決定するのはクライエント。
秘密保持
クライエントの個人的情報・プライバシーは絶対に他方にもらしてはならない。
四つのPもしくは、6つのP
アメリカのケースワーカーであるヘレン・パールマンが提唱した「ケースワークに共通する4つもしくは6つのの要素」をさしている。5、専門職と6.制度は、パールマンその後に追加した項目です。
人 ( Person ) 援助を必要とする人
問題 ( Problem ) 解決するべき問題
場所 ( Place ) 問題に対する援助を行うための場所
過程 ( Process ) 問題解決に至るまでの行動や選択の過程
専門職(Professional person) 支援する人
制度(Provisions) 支援するために必要な社会福祉などの各種制度
ケースワークの理論モデル
診断主義アプローチ
フロイトの精神分析を取り入れたアプローチ。個人のパーソナリティ成長による問題解決をしてくもので援助者主導となる。またF・ホリスは、クライアントを社会的存在として位置付けるケースワーク理論を提案した。
機能主義アプローチ
クライアントが持っている意志の力を十分に発揮できるように援助関係を活用して促そうとしたもの。背景にランクの意志心理学がある。ソーシャルサービスをクライアントが活用できるように援助する方法である。
問題解決アプローチ
パールマンにより体系化されたもので診断主義と機能主義を統合しようとしたもの。このアプローチの目標は、パーソナリティの発達や社会変容ではなく、クライアントと援助者の間で確認された人間関係の不備または事柄との関係の不備の問題解決である。
行動変容アプローチ
学習理論を基礎にしているアプローチ。クライアントが問題と感じていたり解決したいと思っている「行動」に焦点を当て、変容すべき行動が消去されること、新しい行動が強化されることが目標となる。
危機介入アプローチ
緊急な事態に対しての即物的なサービスなど効率よく援助する方法。基本的対応は、即時性、接近性、参加、連携である。臨床対応としては、支持、カタルシスを促す、解釈を与える、医学的介入、環境調整である。
課題中心アプローチ
援助者が依頼する比較的具体的で解決できる問題のみを扱い、目標の達成についての援助が中心で、達成後は新しい目標を持ったり、目標を修正したりする。
家族療法アプローチ
1950年代から精神分裂病の家族研究の中で生まれた。現在、システム理論を基礎としたシステム型家族療法が主流となっている。これは他のシステムと相互影響し合っている家族を取り巻くシステムに変化を生じさせることを目標とする。
統合的なアプローチ
@ ジェネラリストアプローチ
人と環境をシステムとして包括し、ソーシャルワークの焦点を人と環境との接点面である両者の相互作用に当てた理論
A システム理論
物質から生物体そして社会的現象に至るまで、あらゆる組織や集合体に対して共通する認識を試みた理論
B エコロジカルモデル
一般システム論から導き出された生物体の論理を人間と環境との相互交流に当てた人間の生態系を認識する概念
C ケアマネジメント
クライアントが地域で生活するためのニーズを充足するために、クライアントと社会資源を適切なかたちで結び付ける理論。
記録
面接中心に展開されるケースワークにおいて、各面接の終了後に記録を書くことは必要不可欠となっています。
記録の目的は、連続している面接の過程に一本の道筋をつけ、一貫した援助ができるようにすることである。記録によりワーカーが交代しても援助が続行できる。第2の目的はケース及び面接方法の分析に役立てることである。記録をとり、見直すことは、新たな発見をしたり、面接技術を進歩させたり、援助により良い効果をもたらす。第3の目的は、資料のためである。利用者の秘密が守られるのは当然であるが、他の機関との協力の下で援助がなされるときは、その記録が参考となる。第4の目的は、スーパービジョンのためである。ワーカー独自の判断では、主観的になることもある。記録をもとにしたスーパービジョンにより、より良い援助が可能となる。
ケースワーク記録の様式は大別すると次の二つが考えられる。
@記述体の過程記録(プロセス・レコード);時間経過をたどって、その面接風景がかなりの程度わかるよう記録する。単なる会話の記述ではなく、ワーカーの判断、解釈、感情なども盛り込んで記述する。
A要約記録;記述体記録の数回分(例−1ヶ月分)毎に要約し、あるいはケースの状態を示す。あるいは項目別に分けて事実を明確に理解できるようにする。
1920年頃のアメリカでの、セツルメント運動を中心に、青少年団体運動などが全国的に普及し、1930年代以降は、ニューディール政策の一環として、広くアメリカ社会の民主主義の思想を身につけた青少年の健全育成の方法としてグループワー ク活動が強化されたのが始まりとされている。
その後1940年代後半に社会福祉と社会教育の二つの領域にまたがるようになり、1949年にAAGWが採択した「グループワーカーの機能に関する定義」はその後の標準的な定義として広く知られるようになる。また1960年代のG.コノプカによって、具体的なグループワークの定義や発展がなされるようになり、ソーシャルワークの1つの援助技術として認識されるようになりました。コノプカは、個人の社会生活上の問題解決を小集団が持つ治療的機能に着目していたのです。
集団援助技術に関する定義を最初に発表したのはW.ニューステッター。彼は、「集団援助技術とは自発的なグループ参加をとおして、個人の成長と社会適応を図る教育的過程である」と発表している。
コノプカの定義「ソーシャル・グループワークとは、ソーシャルワークの一つの方法であり、意図的なグループ経験を通じて、個人の社会的に機能する力を高め、また個人、グループ、地域社会の諸問題に、より効果的に対処しうるよう、人々を援助するものである」
グループワークの理論モデル
社会的目標モデル
グループ経験を通じて必要な行動様式を強化する こと、また社会的責任という価値観を身につけていくことをねらいとしている。
治療モデル
身体的あるいは精神的ハンディキャップを負っている障害者、犯罪者、孤立している人などを主な対象 としている。グループは人為的グループで構成され、メンバーの変化を焦点とし、各人に設定された処遇目標を達成させるために特定のグループ状況を作り出すことをねらいとしている。
相互作用モデル
小集団を媒介としながら個人と社会組織などのグループが互いの利益のために相互援助システムとして機能することを狙いとしている。
生態学システムモデル
個人、家族、グループ、コミュニティの社会的機能が向上し、すべての人の生活の質が改善されるように、物理的・社会的環境の改善を促進することを狙いとしている。
グループワークの技術
グループワークの目標は利用者の相互援助体制の構築
利用者の成長と変化は、援助者と利用者との相互作用によって起こるのではなく、利用者同士の相互作用が重要
ソーシャルワーカーは、グループの発達過程の理解とそれに対する必要な介入を行う
ソーシャルワーカーの役割は、利用者にグループ発達過程の理解を促進し、自らが他の利用者に与える影響とほかの利用者が自分に与える影響の理解を促進することが重要
グループワークでは、個の目的から集団を、集団の目的から個を支援するために用いられるグループという集団性の力を利用することも重要